玉虫色の空 -3- お月見ステージ
※当時、小学生だった隆浩くんが、「玉虫色の空」を読んで書いてくれました。
【しべりん】は、彼が使っていたアイコンです。
九月九日。
森では、今日は湖畔の広場で「おつきみ」が行われる。
みんな、とってもおおはりきり。
でも、お祭りさわぎがあんまり好きじゃない【でびるん】は、今日もふよふよ。
「おつきさまなんて、いっつも出てるのに。なんで今更まつるのかなぁ?」
そんなことをぶつぶつとつぶやきながら。気が付けばここは【しべりん】の家。
「わ"ぁ〜!【ぱんだん】、なにやってんだよぉ〜!!」
「え、これをここに入れるんじゃなかったの?」
「少しずつ加えるのぉ〜(汗)」
「じゃあ、これ?(どばどばどば)」
「違う〜!!! あ、何食ってるんだよぉ〜!!!!」
「これ失敗作でしょぉ?」
「それは成功したの〜!」
「んー、おいしー☆」
(うるっさいなぁ………)
【でびるん】は、うるさいのは大っきらい。みるみるうちに不機嫌。
窓をのぞくと、めん棒で生地を叩きながら怒鳴っている【しべりん】と、
お手伝いしている(つもり)の【ぱんだん】。
そして、その横には―――――
【でびるん】の大好物、【しべりん】ご自慢のまめ大福。
きょうの「おつきみ」で、みんなで食べるぶんかなぁ?
だったらちょっといってみよっかなぁ……。
「あれっ?」
【しべりん】が、粉の袋を数えながら首をかしげる。
「どしたのぉ?」
「ねぇねぇ、ここにおいてあった、青のかかった銀色の袋……しらなぁい??」
「ぎくっ………」
「ぎく……って、なんかやったのか?」
「えへへー、ひっくりかえしちゃったvvv」
「はぁ〜?!」
おろおろ、おろおろ……
【しべりん】はおおあわて。【ぱんだん】は気にせずつまみ食い。
そして、窓の外でふよふよしてる【でびるん】を発見。
「いいものみつけた☆」といわんばかりにニコニコして。
【でびるん】のそばによってきた。
「でーびるん☆」
「(ぞく)な…なんだよ?」
「あのねぇ、お使い頼まれてくれない?」
「やだよ。なんで俺が…」
「ひまそうだから(どっかーん)」
「ぐふぅッ!!」
「ねぇ…いってくれないのぉ…?」
そういう【しべりん】は泣き出しそうで。
「わ"ー!! わかったわかった!!」
(へへへ、この前教えてもらった上目遣い、効いてるぅーv)
なにか間違っているぞ【しべりん】。(by三上先輩)
「で、なにをすれば……」
「あのねぇ、【むーん】のところにいって“むーん・ぱうだー”をもらってきてほしいの。」
「ムーン・パウダー? なにそれ。」
「しらないのぉ? あのね、おつきみのときに食べるお団子には、これをいれるの。
月光のカケラを粉にしたやつなの。【むーん】にもらってたんだけどぉ、【ぱんだん】がぁ……」
「それを入れるとなんかいいことあるワケ?」
「ないよ。ただのエンギモノ。」
じゃあいれなくてもいいじゃん。
のどまで出てきた言葉を無理矢理のみこんで。
【でびるん】はオトナ。
「じゃあ、よろしくねぇv
あ、ちゃんとお礼するからぁーv」
まったく、仕方ないなと思いつつも、ついつい頬がゆるむ【でびるん】。
【しべりん】のとっておきの「お礼」がちょっと楽しみで、
ふよふよよりちょっとすぴーどあっぷ。
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ちょっと飛んで、ここは雲の上。
【さん】がお空で遊んでいる間は、【むーん】はずっとお家でひなたぼっこ。
してるはずなんだけど…
とんとんとん。
【でびるん】は、とりあえず【むーん】の家のドアを叩いてみる。
返事は……ナイ。
いつ訪ねても、にこにこ笑って迎えてくれるのに。
変に思ったでびるんは、勝手に家に入っちゃう。
家の中は、【むーん】の泣き声が響いていた。
そして、泣いている【むーん】発見。
大きな大きな瞳から、大きな大きなしずくがあふれる。
しとしと、しとしと……
「どうしたんだ?」
「【でびるん】、どうしよう……」
「?」
「あのね……“むーん・みらー”が壊れちゃったの!」
「えぇっ! “むーん・みらー”がぁ!?」
※むーん・みらーとは、太陽の光を反射させる、それはそれはばかでかい鏡のこと。
これがないと月は輝けない。
「どうしよう……今日はおつきみなのに……」
これは、むーん・ぱうだーどころじゃないなぁ。
そう判断した【でびるん】は、とりあえず【しべりん】のところへもどった。
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「「えー?! むーん・みらーがぁー!?」」
【しべりん】はもうびっくり。そして、子供のように肩をすくめて。
残念そうに、ぽつりと。
「おつきみ、できなくなっちゃうよぉ…」
力なくつぶやいた。
「でもぉ、なんとかしなきゃ、みんながっかりするよ?」
「うん、そうだな・・・【とらん】に聞いてみるか?」
「とらんならなんか教えてくれそぉーv」
「よし、善は急げだ」
「わぁーいvわぁーいvvvじゃあ、早くいこぉよv」
「はやくはやく」と【でびるん】を促す【しべりん】をみて、
またもやゆるむ頬を必死にひきしめる【でびるん】でした。
現在時間:PM 01:00。お月見まであと6時間!
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「とーらんっ☆」
大音量で【とらん】を呼ぶ【しべりん】。その表情は期待に満ちている。
「なぁに? こんな朝っぱらからぁ…」
「朝っぱらってゆーかもう2時だよぉ!? なんでそんなにオネボウサンなのぉ?」
「【しべりん】ちゃんがはやいだけだよぉ。
で、なぁに? なんかこまったことでも……」
「なんだったっけ? 【でびるん】?」
「おいおい(汗)むーん…」
「そぉそぉ!むーん・みらーが、壊れちゃったらしくてぇー!!」
「むーん・みらーが? それはこまったねぇ」
「(【とらん】がいうと困ったように聞こえないなぁ)で、どうしよ…」
「んー、職人【しまん】に頼んで、スペア作ってもらおっかぁー」
「スペアなんか、作れるのぉ〜!?」
「うん、職人【しまん】は職人だからそんなの簡単だよぉ〜」
「へぇー、なんかかっくいーv」
「じゃあ、さっそく行ってみるか?」
現在時間:PM 02:30。お月見まであと4時間30分!
そして、湖の水車小屋。
「しーまんさんv」
「ふぉ?なんじゃお前さんは。」
「【しまん】、おいらのことわすれたにゃ?」
「おぉおぉ、森のお主さんかぃ。わしになんのようかの?」
「むーん・みらーが壊れてしまって。
作っていただけませんか?」
「ふぅーむ…だがこれを作るのには「月光石」という鉱石が必要でな・・」
「牧場〇語!?」
「ごぉっほん! すまぬが、きらしておってのう。
探してくれぬか?」
「それはどこにあるんですか?」
「しらん!」
「え"っ……」
「おいら知ってるよぉ〜。【うさぎん】の鉱石コレクションのなかにあったよぉ〜」
「へぇ。じゃあ、【うさぎん】にとりあってみよう」
現在時間:PM 03:00。おつきみまであと4時間!
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「えぇー?月光石を?」
「おねがい〜!! 【うさぎん】〜!! これがないとおつきみできなぁい…」
「おつきみが!? じゃあ【しべりん】のまめ大福も…」
「食べれなくなるな。」
「ま、34個あるし1個ぐらいいいか。」
「やったぁv」
月光石Get!
そして超特急エクスプレスでしまんの小屋へ。
現在時間:PM 04:00。おつきみまであと3時間!
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「ほぉ。じゃあ早速作るとするかのう…☆」
そうして、【しまん】は怪しげなBGMと共に作業室へ。
その間、【しべりん】、【でびるん】、【とらん】は完成を待ちまくり状態。
「ねぇ、ねぇ…間に合うのかなぁ?」
「うーん、間に合うんじゃないか? なにしろ職人だから…」
「…しょくにんってすごいなぁ…」
「ね、でびちゃん、しべちゃん、作業室すごいよぉ」
「え?なになに???」
興味津々でのぞくと、そこは・・・
「うおぉぉぉぉぉぉ!!!!」
がしゃーん!!がちゃがちゃ!!
ごぉぉぉぉ!!ずびし!ずびし!!
しゅいいいいいーん!!
どっかーーーーーん!!
「あ…………ま、いっか☆」
大丈夫なのか職人【しまん】!?
三人は何も見なかったことにして、完成を祈るのでした。
「ふぅー、いいしごとしたわい。」
「ありがとうございます」
「おつきみ、絶対来てねーv」
そうして水車小屋に別れを告げ、三人は鏡をもってむーんのお家へ。
現在の時刻:PM 06:00。おつきみまであと1時間!!!
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「むーん!!」
「ふぇっ…?」
【むーん】は泣きすぎてすっかりお疲れ。
「これ! これ!!」
「わぁ! どうしたのこれ!?」
「いいからぁ! 早くしないと遅れちゃうよぉー!!」
湖畔の広場には、もうみんな集まってる様子。
あとは「主役」がくるだけ!
「さぁ、早く行かなくちゃぁ!!」
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「おつきさま、でてこないねぇ。」
広場に来た【ふらんそわ】は、心配そうにおつきさまがいない夜空のステージを見上げる。
会場全体が、ざわざわ、ざわざわ。
草が微風に揺れられるように、ぞわぞわ、ぞわぞわ。
そこへ。
どぉーん!
と、大きな音がたって。
きがつくと、【むーん】は夜空のステージに跳ね上がった。
そして、おつきさまから三人が降ってきた(笑)。
「わぁーい! きれいなおつきさまぁー!」
「すっごぉーい! きれいでまんまるなおつきさまぁー!」
「今日は飲むぞぉー!」
わぁぁぁっと上がる歓声に。
【むーん】は、嬉しくて嬉しくて。
目から、またしずく。
ぽおぉん、ぽおぉん、と、ゆっくり墜ちてきて。
湖の表面にたたきつけられて。飛び散って。
幻想的で神秘的な銀色の霧になる。
それはそれは美しく。
まるで夢のよう。
「よぉーし、じゃあはじめるかぁー!!」
夢のような雰囲気の中、素敵な月のコテージの中で、素敵なパーティーが始まった。
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そんな中、一人だけ。
ここは湖の波打ち際。蒼白い光がもかもかと集まってきて。
ほんとに静か。氷柱のような風に撫でられて逆立つ波の声が、遠くに聞こえるだけ。
――――【でびるん】は、ひとりで月を肴に木のみ酒を飲んでいた。
酒のせいで火照った頬が、射るように冷たい風で夢幻から現実に冷まされていく。
「こんなところにいたんだ☆」
【でびるん】は、その声に視線だけ合わせた。振り返らない。
声の主はひょこひょこと岩場を歩いてきて、ちょこんと隣にすわった。
月光に包まれた銀色の毛……【しべりん】か。
「今日は疲れたなぁ。」
「…お前のおつかい引き受けるんじゃなかったよ。」
「でも、みんな喜んでたじゃん。【でびるん】のおかげだよv」
「………」
【でびるん】は、持っていた木のみ酒をくいっと一気に飲んだ。
それは、照れ隠しだろうか。
それをみて、【しべりん】はクスクスと笑った。
「あ、そぉだぁ。これ…はいvお礼vvv」
そういって、小さな包みを【でびるん】に渡した。
両手の上に丁度乗るような大きさの箱は、銀色のリボンがかけられていた。
「結局……むーん・ぱうだーは手に入らなかったでしょ?
だから、去年の分使ったんだけど、少ないからこの二個分しか入れれなかったのv」
「いいよ、結局俺はむーん・ぱうだーは届けられなかったんだから…」
「むーん・ぱいだーよりもっともっといいもの、みんなにプレゼントしてくれたじゃんv」
「…そっか。ありがとな」
【でびるん】は、包みを大事にカバンに入れた。
星に飾られた蒼い夜空のステージ。【むーん】のダンスは終わらない。
優しい光を振りまきながら…。
見上げれば、玉虫色の空。
きらきら色に輝く、素敵な空。
「…来年も、月がみれるといいな・・・」