玉虫色の空 -4- 雪の日の夢
雪が降ったんですよ。
し♪ し♪ しろうさぎーんはなぜ跳ねるッ♪
ゆ♪ ゆ♪ 雪がとってもくわいおくちゅーるッ♪
ぴょこたんぴょこたんと、朝も早くから一番雪を踏みしめてるのは。
…あ、自分で歌ってたね。そう【しろうさぎん】なのさ。
し♪ し♪ しろうさぎーんはなぜ回るッ♪
み♪ み♪ みそにこ…
「おや、おはよう。相変わらず早いね」
「おはよ!【ごろー】しゃんも早起きしゃんでふね」
薪を取りに出てきた【ごろー】にさっぱりと挨拶して、
さて【しろうさぎん】はどこへ行くんでしょ?
「べっつにぃ〜」
あ、そうなの? ただのお散歩だったんだね。
「ゆきー!!!!」【ぱんだん】大はしゃぎ。
「キャー☆ 雪やわーvvv」【はむらん】すでに半分埋まりながら転げまわって。
「【しばーん】!! 雪だるま作ろーよぉv」【しべりん】跳びはね。
「・・寒いねぇ。でも気持ちいいなァ」【しまん】窓辺で日向ぼっこ。
みんながようやく、雪に喜び庭かけまわろうってころ。
一本もみの樹のある、小高い丘の上から森を見下ろしながら…
「ふふん♪ どーでふか、この【しろうさ】のカリスマちっくな芸術作品は」
なんと雪景色の森の中に、足跡でくっきり描かれた巨大な…おでん。
△○□がきれいに一本の線で並んでる。スゲェ。
…でも、なんでおでんなん?
「冬といったらおでん! おでんといったらお味噌でしょ! お味噌といったら…」
ああ、はいはい。なるほどね(味噌ダレか!)。
「さーて、今度はアッチの空き地のほうへいってみるかな」
し♪ し♪ しろうさぎーんはしんぎんうぃずゆー♪
と♪ と♪ とらんのぱんつはしましまぱんつ♪ はいてもはいてもすぐぬげ…
こらこら。今時、誰も知らないぞ。
それはともかく、森の外れまで、ぴょこたんぴょこたんとやってきた【しろうさ】。
今度はどんなゲージツをやったろーか?
なんて、片足ぺたぺたしながら腕組みして考えてると…。
「ん? 誰でふか?」
明るい陽射しに照らされて、真っ白な雪の粒がきらきらと。
その中に少し怯えるようにして、エメラルドグリーンの瞳が2つ。
「見たことないでふねぇ…こんちゅわ♪」
「………」
「…………」
「……………」
「………………」
見つめあう2つの緑と2つの赤。そして…
「…くっはぁ! い、息するの忘れてた」
「…あの…」
「ひょえ! しゃべったぁ〜!?」…そりゃ、しゃべるでしょう。
「…あ…ここは…どこですか…?」
おずおずと、恥かしいそうに、ちょっと上目づかいで。
「ここ? ここはしまぱん…じゃなかった【とらん】の森でふよ」
【しろうさ】は森のほうを指さして。
「あっちにみんないるでふよ。雪で遊んでるんじゃないかな?」
「…みんな…ですか?」
「みんな、でふよ? ゆかいな仲間たちでふ♪」
などなど。2人で色々お話ししてるうちに、すっかり打ちとけて。
「名前はなんていうんでふ?」
「名前…ボク、【えめらるど】っていうの」
「【えめらるど】でふかー。いい名前でふ…って、ボクゥッ!?」
「え?…ボク…だけど…」
「……お、とこの、コ?」
「?…うん。そうだよ」
(お…女のコだと思ってた…)
しばらく2人で。
「…ふぅ。こんなもんでふね♪」
「そうだね♪」
「さて。じゃ【えめ】ちゃんを森に案内するでふ!」
「うんv よろしくね」
「まかせてちょー♪」
ぴょこたんぴょこたん…。
「…だからさぁ、向こうのほうに行くと牧場があるわけ」と【なまらん】。
「知ってるよ! 遊びに行ったことあるモン!!」と【くろん】。
「まだ行ったことないー。今度一緒に行こうよ」と【ぶうたん】。
雪を盛り上げ盛り上げ、穴を掘り掘り。そこへ、ぴょこたん。
「こんちゅわ! お友達を紹介するでふよ」
「…こんにちは。あの…【えめらるど】っていいます…」
よろしくーよろしくーよろしくーとお互い簡単に自己紹介。
「さー次いくでふよ!」
「…うんv」
そしてぴょこたん。
…ん?【なまらん】の様子がおかしい。どうした?
「…か…かわい…い…」お、これは…。
「こんちゅわ!」よろしくーよろしくーよろしくー。
「次♪」「うんv」ぴょこたん。
…どうした【しばん】?
「…今会ったばっかりなのに…」あ、これも…。
「こんちゅわ!」よろしくーよろしくーよろしくー。
「今度はアッチ♪」「うんv」ぴょこたん。
…固まってるぞ【しまん】。
「…はふぅ。どーしよう…」わ、これも…。
「こんちゅわ!」よろしくーよろしくーよろしくー…。
ふわふわふわふわ…。
「あーあ、まったく【でびるん】は風邪ひいちゃうしぃ」
ぴょこたん。
「あ、【えんじゅー】! こんちゅわ!」
「【えんじぇるん】だよー。こんにちは【しろうさ】!」
「お友達を紹介するでふ!」
「あ…こんにちは…【えめらるど】です…」
「さー今度は海にいってみるでふ!」
「うんv」ぴょこたんぴょこたん…。
………なに呆けてるの【えんじぇるん】?
「…好き」…はぁ。やっぱし…。
「…っくしッ!!(ずびー)」…風邪はやーね。
もーダルいしウザいしセツナいしで、
一本もみの樹の上でへろへろしてる【でびるん】。
そこに一陣の黒いつむじ風。
「…寒ッ! 風邪ひいてんだぞ…っくしッ!!ったらウラァ!!」
「なんだ、風邪ひいた? バッカじゃねーの(笑)」アタマの上に一本角。
「よぉ(ずびー)久しぶりだな【だーく】。珍しいな、どした…っくしッ!!」
「わっ! コッチに向かってクシャミするなよ!!」
「…これで一通りまわったかな」
【えめらるど】を連れて森をぐるりと一回り。
2人は清々しく森の中の陽だまりで一息。
そこへ。
「あ、いた!」【なまらん】だね。「あ、ねぇちょっと【しろうさ】…」
「? なんでふか?」ぴょこたん、と。そして【なまらん】がゴニョゴニョ…。
「…【えめぷー】は男のコでふよ?」【なまらん】ショック!!
放心状態の【なまらん】を尻目に、今度は【しばん】が。
「? どーしたんだアイツ…。あ……ね、ねぇちょっと【しろうさ】…」
「なんでふ?」ぴょこたん、と。そして【しばん】がゴニョゴニョ…。
「……。【えめ】は男のコ」【しばん】ショック!!
放心状態の【なまらん】と【しばん】を尻目に、今度は【しまん】が。
「?? なんだ? あ……【えめらるど】さん…あの、その」ゴニョゴニョ…。
「【えめ】は男のコでふ!」【しまん】ショック!!
「……なんでふか!? こんなトコにいたらまだやって来るかもでふ」
なんだかわかんないけれど、3人も次々に放心するのを見たもんだから、
おどおどしちゃった【えめらるど】の手をとって。
「ちょっと隠れてたほうがよさそう。行くでふよ!」と…片目をパチコ。
「…うんv」ぴょこたんぴょこたん…【しろうさ】のほっぺは、一瞬ピンク…。
「…ハグレたァ?」一本もみの樹の上で似た者同士。
「そうなんだよ。このヘン通りかかってさ、
オマエに挨拶してくるから待ってろって言ったのに」
「…っくしッ!(ずびー)ほふぅ…。で? オレにどーしろって?」
「心当たりないか?」
「…風邪ひいてずっと寝てンだぜ?」
「そーいやそーだな。…バッカでー(笑)」
「あーもう教えねェ」
「なんだよ、知ってるのか?」
【でびるん】面倒くさそうに指さして。
「ホレ、アレだろ?」
「ん? あ…」
「だから、そのへんにいるよ。多分…っくしッ!!(ずびー)」
「ここまで来れば大丈夫♪」ぴょこたんとまた森の外れまでやってきて、
デコデコ岩に腰かけた2人。
「ちょっと待ってて。温かいミルクティーを持ってくるでふ」
「…うん、ありがとv」【しろうさ】は1人、お家へ向かってぴょこたんぴょこたん…。
「たっだいまー♪でふ…って、アレ?」
辺りを見回してみても。ちょっと探し回ってみても。
「…どこ行ったのかな…」
【しろうさ】は1人、温かいミルクティーの入ったポットを抱え。
ぴょこたんぴょこたん…。
「なんだか……ほんとにいたんでふかね?」
どうやら実感がぼやけてきたようで。
「夢でも見たような心持ちでふねぇ…」
【えめらるど】なんて、本当はいないんじゃない?
急に消えちゃったんじゃなくて…最初からいなかったんじゃない?
明るい陽射しにきらめく、雪のまぶしさに現実を奪われ…
あれもこれもが……【しろうさ】の淡い白昼夢。
ふと、思いついて。
「……行ってみるでふ」
ぴょこたんぴょこたん…。
一本もみの樹のある小高い丘の上で。
「……あ……」
森の外れを見下ろした【しろうさ】。そこには。
長い耳と小さな耳。大きくて真っ白な顔2つ。
とっておきの木の葉をならべて、赤い瞳が2つ。
そして…エメラルドグリーンの瞳が2つ。
「……また、いつか……きっと会えるでふねv」
丘の上から、雪化粧の森が明るい陽射しにきらめいて。
見上げれば、玉虫色の空。
きらきら色に輝く、素敵な空。
ふわふわふわ…。
「ただいまー……はぁぁ」
「どしたん?(ずびー)」
「今日ね、とっても素敵なコに出会っちゃったvv」
「……知ってる。さっき【しろうさ】が見舞いにきて教えてくれた…っぷしッ!」
「はぁぁ……ボク、どーしよう……vvv」
「……あのコ、男のコだってさ(ずびー)」
「…………へ?」
「……お・と・こ・の・こ」
【えんじぇるん】ショック!!!!