玉虫色の空 -8- 丘の上でふたり
そろそろ風が涼やかに。
そんな頃、澄みわたった夜空には【むーん】の柔らかな光が振りまかれ。
星もきらきら。
風もそよそよ。
「いってきまーす♪」
【うさぎん】は今日も元気にお家を飛び出して。
手作りクッキーを抱えて、ぴこぴこ駆けていく先は。
ところで、いつもの森のネコだまり。
このところ【くろん】がナニやら悪戦苦闘中。
ベヨンボヨンとおかしな音が響いてる。
「ほぅほぅ、そーかそーゆーことか」
一人ごちながら、ソイツを爪でひっかいてみると。
細い糸に引っかかって弾かれて、ベロンボロンと音が鳴る。
「ここを押さえてひっかけばいいんだな」
ビロリンボロンベロンベロン♪
「【くろーん】何やってるのー?」
「オレは単一個体または細胞から無性生殖によって生じた遺伝的に同一な個体群または細胞群かッ!」
「…こた…さいぼ…? なんのことー?」
こけっと首を傾げる【みっけん】。
いつもの森のネコだまり。
ぴこぴこ【うさぎん】、今日もボコボコ切り株で待ち合わせ。
【ぱんだん】と木の実や木苺を採りに来たのでした。
「遅いなー【ぱんだん】…あ、こんにちはーvv」
相変わらずそこらをウロウロふよふよしてる【でびるん】。
「おー。こんちわ【うさぎん】」
よいしょっと切り株に腰を下ろすと、
「今日は【ぱんだん】と木の実採りかい?」
「うん♪ 今日もいっぱいいっぱい採るんだよv」
がさごそ抱えた包みを開き。
「はい、これ【でびるん】にどーぞ♪」
「わー、【うさぎん】が作ったのか? ンまそー」
さっそく1つもがもが。も1つもがもが。も1つ…
「あっ、ダメー! それは【えんじぇるん】のぶん!!」
そんなこんなで…と、なんか向こうの樹のかげに…?
「…………はぁ…………」ため息のご主人は?
「あ!【ぱん】ちゃんおっそーい!」
「ごっめーんι 木の実を入れる袋を探してたのでぃす!!」
てなわけで、んじゃまたー♪とか言いながら。
ふよふよふよふよ…
「あれ?【みっけん】こんなとこで何してん?」
「…あ、【でびるん】。こんにちはー」
「いや、こんにちはーはいいけどさ。どーしたん?」
「うん…あのね…」ごにょごにょ。
いつもの森のネコだまり。
【くろん】のビロリンボロン♪にあわせて、
【しまん】や【みっけん】や【るっしー】やらがニャウニャウミャーミャー。
少し離れて岩の上、
それを眺めて【とらん】と【でびるん】。
そして森の中から…。
「………♪」
ピンクの耳がぴょこぴょこ。
歌い終わったみんなは、それぞれの場所で日向ぼっこ。
【みっけん】、ピンクの耳を見つけると。
「………あ」
内心、ちょっとはうはうしながら、
「あ、ねぇ…こっちで一緒に日向ぼっこ…」
ピンク耳がぴょんと跳ね、ぴこっと樹のかげへ。
真っ赤になって半分顔をのぞかせると、
「…うん」
ちょっと離れた岩の上。2人並んで日向ぼっこ。
だんだんおしゃべりも弾んできて、
「これ、今日採ってきた木苺だよ」
「どれどれ…おいしー」
「【うさぎん】も食べよー」
内心、ちょっとうはうはな【みっけん】と…。
なんかもー、そんなことがあったりなかったり。
「ちーぃっす。【でびるん】いるかい?」
一本もみの樹の根本で。
ギタァとかいう例のビロンボロンを担いだ【くろん】。
枝の間から逆さに顔出して、
「こんちゃー。上がるかい?」と【でびるん】。
さてさて。一本もみの樹のてっぺんで。
「なるほどねぇ」【むーん】にもらったお菓子をもがもがしながら。
「もー、見ちゃいられないさ。どーにかしようぜアレ」
【くろん】もひとつご相伴。もぐもぐ。
「そうだなー…」もが。
いつかのいつものネコだまり。
日向ぼっこもそろそろ終わり。ぱらぱらみんな帰っていく。
んじゃまたー♪てな調子でふよふよ帰ろうと思った【でびるん】、
森の木陰にピンク耳発見。
「…?【うさぎん】、何してんの?」
ぴこぴこ。ふよふよ。
あれやこれや、おしゃべりしながら帰り道。
「今日は【みっけん】いなかったね」と【うさぎん】。
「ん? 何か用事が出来て、森の外に行ったんだって」と【でびるん】。
「そーなんだ…」大事そうに抱えた袋の中から、甘酸っぱい香りがふわり。
「…木苺だねぇ?」ははーんと【でび】。
「え…そ、そうだよ」アセアセ【うさぎん】。
「持ってきてたんだ」ふふーんと【でび】。
「なんでそんな顔するの…」アセアセ【うさぎん】。
「【うさぎん】はなんであせってるの?」おやー?と【でび】。
「…もうッ」
…そんなこんなの帰り道だったとか。
「へぇー。そんなことあったんだー」
珍しく、律儀にお茶入れてた【えんじぇるん】。
「これはボクの出番かなー♪」
ずずっとお茶すすりながら…顔見合わせる真っ黒2人。
「…大丈夫かぁ…?」
ずずっと。
そろそろ風が涼やかに。
そんな頃、澄みわたった夜空には【むーん】の柔らかな光が振りまかれ。
星もきらきら。
風もそよそよ。
そろそろ年に一度のオン・ステージ。
【むーん】が織りなす光のダンス。
ふよふよふよふよ。
「どーだった?」「うい。OKOK」
「んじゃ、パーティの準備にいこー♪」
いつもは静かな湖畔の広場。
今日はパーティでワイワイガヤガヤ大にぎわい。
【さん】が染め上げた青紫の夜空のステージに、
ぽーんと飛び上がって【むーん】が舞う。
「今年もきれーだーvv」
「ほんとー! スゴイスゴイッ」
「さー飲むぞー!」
【くろん】がギタァをかき鳴らし、みんなで大合唱♪
【えんじぇるん】がアッチでわはは、コッチでわははと盛り上げる。
湖畔を見下ろす丘の上。
こっちからぽくぽく【みっけん】が登ってくる。
「まったく【くろん】てば…大事なもん置き忘れたから取ってきてくれって…
自分で行けばいいじゃないかー」
でもって、あっちからはぴこぴこ【うさぎん】が登ってくる。
「ここかなー【でびるん】が言ってたのって。
【むーん】のお手伝いってなんだろう…?」
ぽくぽく。
ぴこぴこ。
月明かりの下で。
「…あ」
「…あ」
2人が出会ったそこには。
温かいお茶の入ったポットとカップ。
木苺の入った袋がひとつ。
そしてなにやら紙切れが一枚。
『ふたりで みなさい くろん』
夜空できらきら光のダンス。
【むーん】は2人を見つけると、優しく微笑んで…。
月のしずくをひと粒。ふた粒。
ぱぁっと広がる光の波紋。
ゆらゆらきらきら。
ふわふわきらきら。
「うわぁ…」
「ふーわぁー…」
波紋はゆらゆら、プリズムのダンス。
闇の中に浮かび上がる【むーん】からのメッセージ。
世界いっぱいに広がって…
見上げれば、玉虫色の空。
きらきら色に輝く、素敵な空。
湖のほとり。木の実酒をこくり。
「ンだ…こんなとこにいたのか」
「よぉ。ごくろーさん」
【でびるん】の横に腰を下ろすと、【くろん】も木の実酒を一杯こくり。
「へぇ…こりゃいいや」と、湖をながめながら【くろん】。
湖面に夜空が映えて、まるでここは宇宙(そら)の中。
「【くろん】、鳴らせよ」笑いながら【でびるん】が。
「よっし。ンじゃトッテオキのを演るか」笑いながら【くろん】が。
〜♪
そろそろ風が涼やかに。
そんな頃、澄みわたった夜空には【むーん】の柔らかな光が振りまかれ…。